「商店街でダッシュ?」 そう聞いた人のほとんどが、驚いた表情を見せました。でも、僕達にとってはごくシンプルな発想だったんです。 「子どもたちが思いっきり走れる場所って、意外と少ないな」と。 遊具のない公園、車がひっきりなしに通る道路、体育の時間があっても、“楽しく全力で走る”体験は限られている。 だったら、街のど真ん中で走ってしまえばいいじゃないか——そう思いました。 そしてもう一つの理由。それは**「商店街を思い出のある、楽しい場所にしたかった」**という思いです。 ある日、生徒に「オリオン通りで走るんだよ」と話すと、「オリオン通りってちょっと怖いイメージがある」と言われました。 保護者の方からも、「夜は居酒屋が多くて、子どもにとってはちょっと…」という声が。 そんな話を聞いて、街の中心であるはずのオリオン通りに、どこかネガティブなイメージが根付いていることを実感しました。 でも、そのイメージを変える力がスポーツにはある。 そして、走ることは誰にでもできる最高のエンタメです。 コモド(子ども)たちが全力で駆け抜ければ、自然と笑顔が広がる。 その笑顔こそが、商店街を変えていく力になると信じて、「オリオンダッシュ」の開催を決意しました。 最終的には、オリオン通りがこう呼ばれるようになったら嬉しい。 「オリオン通りって、楽しい場所だよね」 「今日はどんなイベントやってるかな?」 「ここでお父さんと勝負したよね!」 そんな会話の中に、“ポジティブなオリオン通り”が自然と登場するような未来を作っていきたいと思いス
「オリオンダッシュ」というイベント名が決まり、場所は宇都宮の象徴ともいえる“オリオン通り”に。30mの人工芝コースを敷設する許可を取り、商店街の皆さんに協力をお願いしながら、少しずつ形になっていきました。正直、大人たちのほうがソワソワしていたかもしれません(笑)。「これ本当にやるの?」「転ばない?」「人集まるの?」そんな不安を吹き飛ばしてくれたのが、子どもたちのまっすぐな走りでした。
当日、朝から快晴。開始前から並び始める親子連れ。受付に行列ができ、商店街がほんのり熱気を帯びていきます。「位置について、よーい、ドン!」の声と同時に、街に走る音と笑い声が響きました。走り終えた子が振り返って「もう1回走っていい!?」と叫ぶ。何度も並ぶ。何度でも挑戦する。その姿に、観ている大人たちがどんどん引き込まれていきました。
この日はただ走るだけでなく、事前予約制の「かけっこ教室」も併設しました。専門の指導者がフォームやスタートのコツをレクチャーし、子どもたちは自分の走りに集中。ビフォーアフターが目に見えて分かるので、本人たちもすごく嬉しそうでした。 そして、ありがたいことにテレビ局や新聞社の取材も入り、撮影クルーが子どもたちの走る姿を追いかけてくれました。後日、ニュースで紹介されたときには、「あ、これ出たよね!」と保護者の方から連絡が来るほど話題に。
正直、イベントをやる前は不安の方が大きかったです。でも、あの日、ゴール地点で子どもたちが見せた笑顔や、保護者の方から「こんなに真剣に走ってる姿、初めて見た」と言われた瞬間、すべてが報われた気がしました。 走ることで、自信がつく。拍手をもらえる。知らない子同士で「すごいね!」と自然に会話が生まれる。たった30メートルだけど、そこにはものすごく大きな価値があったと思っています。
このオリオンダッシュは、僕らにとっても“最初のダッシュ”でした。でも、これをゴールにはしません。次はもっと多くの人が気軽に参加できる仕組みを作ったり、年齢別・障がいを持つ子ども向けのレーンを用意したり、可能性はいくらでもある。 次回開催はすでに構想中です。もし「こんなイベントやってほしい!」という声があれば、ぜひ教えてください。みんなでこの“全力ダッシュの輪”を、もっともっと広げていけたら最高です。